調香師の香水手帖 “オートクチュール香水”
お客様から、高価な天然香料で究極の香水を作りあげたいと。。
香水が大好きな、私も負けそうな鼻(ネ)の持ち主から
ご依頼いただいたのでお受けしました。
お花の香りを良く感受しておられました。
お値段に関係なく作品を作る事は大変有り難く、また自分自身にとって
闘いと挑戦でありました。
テーマを決めるのに3ヶ月。
ミューゲ、ローズ、ガーデニアと迷い、昨年の初夏に梔子の花を
再現したいとテーマが決まりました。
梔子の花と睨めっこしながら楽しんで調香していたのに、
自然の生きた花と比べる日々が続き苦戦の連続であった。
6ヶ月闘って、パワフルグリーン、リッチフラワー、ココナッツノートの梔子は、
Vintage Tuberose、Vintage Jasmin、Vintage Jasmin Sanbacの骨格で仕上がった。
いくつかのサンプルを郵送後、S様からお手紙をいただいた。
『やっと東京でも鈴蘭の花が咲いたので、香りを確かめてみました。
東京で咲く花の香りは本当に弱くわかりにくいのですが、ハッとするような
グリーンの香りが芯になった清潔感のある花の香りがしました。
甘い香りは一切感じませんでした。
お送り頂いた香水は、素晴らしく花の香りを再現されていると思いました。
すっきりと優しく、リラックスできる香りです。』
『そのことで、香水とは何かについて考え込みました。
5月は花の季節とあって、薔薇と並んでジャスミンも咲き始めています。
そして、あの間違えようのない甘い花の香りは、やはり特別だと再認識しました。
くちなしも、好き嫌いは別にして、あの香りを間違える人はいないと思います。
私にとってはやはり特別です。花を見れば香りを確かめずにはいられない花です。
それでいて、生花のくちなしは、あんなに濃厚な甘い香りが爽やかに抜けていく。
掴みどころが無く、不思議なものです。』
『花の香りの再現では香水にはならない。では何が香りを香水たらしめるのか?』
闘いパート2 が始まった。
生きている花の香りはイオン化された水が触媒となり、
エネルギーを与えてキーの高い香気を自然のままに放っているのである。
香水をつくり続ける中で、生きた香りと比べると自分の感覚と技術の無さに
嫌気がさすこともある。それで30年間 毎日香りを作り続けてきた。
自然のように輝くキラキラな梔子をどう表現するのか、
ラストノートの梔子の香りが肌に残すこと、酸素と風ともに色々香って輝いて飛んでくる。
そんな香水を作り上げるのにOsmantas Absolute,Ylang Ylang Comoros,Mimosa Absolute,Lilac CO2,Violet Leaf Absolute,Organic Vanilla,などをブレンドして
仕込んだ。
完成した香りは最も女らしい気品高く重要な香水に仕上がりました。
何よりもお客様にお似合いであると確信しています。
10年後、20年後も変わらず澄んだ空との融合する香り。
スタートしてから1年8ヶ月の時間が経過していた。
作品80本が完成した。
自分だけの香水は究極の贅沢である。
今回の香り旅は夢
まこと虫
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